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Moulin Rouge! The Musical(ムーランルージュ ザ・ミュージカル)プレビュー初日の感想

Moulin Rouge! The Musical(ムーランルージュ ザ・ミュージカル)プレビュー初日の感想f:id:moriyaman1021:20180711173551j:plain

7月10日からボストンのEmerson Colonial Thetatreにて上演されているMoulin Rouge! The Musicalのプレビューを初日に見に行きました!

言わずと知れたミュージカル映画の傑作「ムーランルージュ」の舞台版。主役の二人はBroadwayのスターAaron TveitとKaren Olivo。f:id:moriyaman1021:20180711173736j:plain

以下ネタバレあり

映画自体は2001年製作のバス・ラーマン監督によるコテコテのラブストーリーのミュージカル映画。主演はユアン・マクレガーニコール・キッドマン。ストーリーはパリに実在するナイトクラブ、ムーランルージュを舞台にした「ロミオとジュリエット」といったところ。極彩色、豪華絢爛な独自の世界観のなかで20世紀のヒットソングをミックスして作り上げた新しいタイプのミュージカル映画として話題になりました。

そしてこの映画、好き嫌いがハッキリ分かれます。目が追い付かないくらい素早いカメラワークに異様にテンションの高いキャラクターたち、目がチカチカする色使い。合わないタイプの人は徹底的に拒絶反応を起こします(笑)。でも好きな人は好き。そして私は大好き!サントラも一生懸命聴いてましたね。とくに唯一のオリジナル曲♪Come What Mayは当時中学生だった私にも分かる簡単な英語で真正面から愛を語っていて、歌詞覚えるくらい聴いてマネしてました(笑)。

で、それくらい好きな映画で、もともとミュージカルとして高い完成度を誇っている映画の舞台版なわけですよ。当然すごい高い期待感を持って見たんですけど、感想としては、、、、、

十分完成されてるものを必要がないのに壊すな!!

です(笑)。

そう思った理由をこれから説明していきます。長いです(汗)

前述したとおり、このミュージカル映画が評価された一つの理由は既存のヒットソングを組み合わせた、いわゆるJukebox musicalの先駆け的な存在だったことなんですよね。ということで舞台版ももちろんJukebox musicalなわけですが、もうこれがやりすぎなんです。PlayBillのMusic Creditを見ると、優に100曲以上あります(笑)。映画公開以降にヒットしたポップソングもこれでもか!というくらい使ってます。ビヨンセケイティ・ペリーレディ・ガガにアデルに…選曲の趣味はいいと思いますよ、なぜならどれも私が好きな曲だから(笑)。だけどね、問題はこれらの曲がストーリーの情景や登場人物の心情を表現するために使われてるのではなく、これらの曲を歌うためにストーリーが使われてる!というところ。その曲がストーリーやキャラクターと密接なつながりをもって使われるのなら、それが既存曲でもオリジナル曲でも構わないけど、この舞台では、ただ「この曲をここで使ってきたか~!」っていうタイプの面白さを観客に提供するためだけに必然性が無くヒット曲を使用しているので、いくら知っている曲が流れても印象が薄い。感情に訴えかけるものがない。しかもどの曲も短く編曲されてるので、じっくり味わう前に終わってしまう。常に歌ってるので(ミュージカルだからいいんですけど)、セリフ自体は非常に少なく、そのセリフも大抵は歌の導入としての役割しか果たしていないように感じられ、物語やキャラクターを深く掘り下げるには至っていない。つまり早い話、脚本が弱い。不思議。オリジナルの映画はシンプルだけどしっかりしたテーマと物語のフレームがあったのに、何で壊すんだろう?

舞台版では映画では一切明らかになっていない主人公のSatine(サティーン)の過去に言及する場面もあるんですが、いかんせん脚本が薄いので、取ってつけたようにしか感じられないのが悲しいところ。昨今のLGBTQを意識したような場面もあるにはあるが、それも蛇足にしか思えない。

全体の印象としては、演劇ではなくコンサートを見たような感覚(と疲れ)が残ったし、あまりに最近のヒットソングばかりなので時の経過という試練を耐え抜いて名作ミュージカルになるのは難しいと感じた。

キャスト陣に関して。

まずChristian(クリスチャン)役のAaronは、さすがの実力。歌、聴かせますよ。映画版のユアン・マクレガーとは異なる印象ながら(ユアンが映画の中で時折みせるアホっぽい顔が個人的にはツボ)、ボヘミアンの作家(作曲家)という役を自然に納得させるルックスや声とちょっとしたコミカルさもあり◎。

でSatine役のKarenなんですが、これが良くも悪くもパワフル。歌は当然ながら上手いです。だがしかし、私にはどうしてもSatineに見えない。今回舞台版見て、改めて映画版のニコール・キッドマンがいかに良い仕事してたか分かりました(笑)。ニコールのSatineは売れっ子の高級娼婦という役どころでありながら、すごく清楚だったんですよ。特に他の女性キャラクターが道化みたいな濃い化粧してるなかで、ニコールの涼やかな美貌が際立っていて、ただそこに存在しているだけで何の説明もなく、ChristianやThe Dukeが恋に落ちるのが納得できる存在感なんですよね。それに対して、KarenのSatineはセクシー…むっちりグラマーなタイプ。プレイボーイ誌に出てきそうな典型的なアメリカのセクシーで、まさに高級コールガール。でもだからこそ、なんでSatineがほかの娼婦たちと違って特別なのかという点であまり説得力がなく、キャラクターとして弱い。あとKarenが与える印象がまさに“したたかで強い女”、しかも現代の強い女の印象。真実の恋と現実の狭間で揺れ動く薄幸の美女というより、稼いだお金で起業して実業家して成功してそうなタイプの美人なんですよ(笑)。そんな感じの彼女がガンガン歌うんで、私にはSatineではなくビヨンセに見えました(笑)。なので彼女がビヨンセの歌を歌っているシーンはよかったです。(あと個人的にはAaronとKarenのデュエットはイマイチでした・・・)

The Dukeに関しては、映画版に対して魅力減の設定。一応悪役のThe Dukeですが、映画ではコミカルでピュアな面もあるキャラなんですよ。だってお金持ちで貴族なのに娼婦であるSatineに本気で恋しちゃって、Satineにはぐらかされてベッドインできなくても、健気に思い続け、劇場に出資し、初夜を待ってるって、なかなか可愛いですよね?確かに映画後半は嫉妬に狂ってChristianを殺そうとしたりしますが、それも本気で好きだからなんだと分かるから、観客は主人公ふたりの恋を応援しながらも、だまされてるThe Dukeのこともちょっと可哀そうに思ったりして。それに対して舞台版では、Satineは会ってすぐにThe Dukeに体を許して初夜ネタで引っ張りません(笑)。(よってSatine はChristianとThe Dukeと同時進行で交際してます)ここ映画ではストーリーの大きな要になっているので意外だったんですけどね。で、舞台版ではThe Dukeは女も劇場も自分の思い通りにしたいコントロールフリーク、単なる支配欲の強いキャラクターそして描かれています。恋するものの悲哀もコミカルさも取り上げられてしまいました。演じる俳優さんにとっても残念・・・・

その他、ジグラーやロートレックに関しても、何度も言っているように脚本が薄いので、俳優さんがいくら頑張ったところでたかが知れているという感じ。

ダンスナンバーで見ていくと、一番大事な第一幕の最初が弱い。観客を舞台の世界に引き込むパワーに欠け、散漫な印象。良かったのはインターミッション後の“Bad Romance”。レディガガのエキセントリックさと浮き世離れしたムーランルージュの世界観がマッチするし、ダンスナンバーとしての勢い、見どころも有り。観客も大喜び。映画版からの”ロクサーヌ“のタンゴのダンスナンバー等も悪くなく、ダンスナンバーとして楽しいところは多いのはプラスのポイント。

舞台セットは豪華の一言。お金がかかっていると思われます。映画の世界観を忠実に再現してます。ただ必ずしも必要とは思えないものあり(映画版からの巨大な象とか)、アイデアの面でも映画版を超えているとは言い難いかな。照明は素晴らしいと思います。キラキラピカピカです(笑)。トニー賞取れるとしたらこの辺かな。

最後にラストシーンについて。これはひどいです。唐突であっけなく、これで終わり?の印象。映画ではFreedom, beauty, truth, そしてLoveという映画のテーマを高らかに歌い上げるクライマックスに向けて、テンションが高まり、伏線が張られ、それらが一気に解放される、これ以上ないクライマックス感ありまくりのラストシーンなのに、、、。なんでこうなる?なぜ敢えて変えたの?そもそもこの結末だったらストーリーそのものに意味がなくない?!と心の中で叫んでしまう不完全燃焼感が残りまくりました。

えーと

色々言いましたが、まとめると、映画版の既存のヒット曲をミックスして使うという手法と物語の枠組みを借りて、新しい作品を目指しているもののオリジナルまだまだ及ばない、というか劣化しているというのが現状でしょう。

うーん、改めて読んでみると、私相当手厳しいですねぇ。思い入れのある映画だったので、ついつい見る目がきつくなってしまいました(汗)。

まぁ、観客は大受けでしたし、何よりまだプレビューなので、これから一杯手直しが入ると思います。(というか、そうであって欲しい。)私としては、基本であるストーリーと登場人物をより深く、よりクリアなものにして、余分なものはそぎ落としてほしいと思います。まぁ、今の感じでも、ヒットソングをたくさん詰め込んだjukebox musicalとして気楽に見る分には十分楽しめるかと。ただし映画版で味わえるカタルシスを期待していくと、がっかりすると思います。

今後も安いチケットが取れれば、変更を確認するために見に行くので、続編をご期待ください。

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